昔から僕はタイミングの悪い子供だった。
小学校も、中学校も、何故か修学旅行の時期に体調を崩した。
まるで地元の町から出られない呪いでもあるかのように、
「とても連れて行けない」レベルにまで熱が出た。
ベッドに貼り付けられたまま、今頃みんな楽しんでるんだろうなぁと
熱で浮かされた頭でぼんやり考えて切なくなった。
友人が気を遣って買ってきてくれたお土産が悲しかった。
卒業アルバムの修学旅行の部分だけ、自分の知らない頁なのが寂しかった。
人生のうち修学旅行というのは普通3度しかない機会で
そのうちの2回を棒に振った僕が、高校の修学旅行を心底楽しみにしたのは
責められる事ではないと思う。
―――――――――――――正臣が一緒なら尚更。
「では修学旅行の行き先の希望を記入して明日のHRまでに提出するように」
担任の先生がそう告げて、今日の帰りのHRが終了した。
教室内がざわめく。あちらこちらで何処を希望するかの相談が始まっている。
手元のプリントに目を落とす。
韓国・オーストラリア・沖縄・北海道・京都/奈良の選択肢が書かれた
修学旅行の行き先希望。
この中の何処にも、僕は行ったことがない。
国内はおろか、海外なんてもっての外だ。
以前ならはしゃいで何処にしようか悩んだろうけど、
今の僕の目には「ただの地名」としか映らない。
(だって、正臣が、いない)
一緒にいけると思ってたのに。
彼と、園原さんと、見知らぬ土地を笑いながら散策するのを
夢見るように、想像して、信じて疑わなかったのに。
(退学しちゃったらもう無理じゃないか。
せめて休学にしていてくれたら希望があったかもしれないのに)
「バカ正臣」
あれだけ行ってみたかった修学旅行も、もう魅力を感じない。
「正臣がいなくちゃ、意味がないのに」
最後のチャンスすら消し去った、薄情な親友のことなんてもう知らない。
親友の事情なんて、もう知らない。
「絶対、帰ってきてもらうんだからね」
詫びてもらわねば気がすまない。
修学旅行じゃなくていい。一緒に旅行に行ってくれたら。
別に旅行じゃなくていい。一緒に遊びに行ってくれたら。
遊びに行かなくてもいい。ただ、一緒に居てくれさえしたら。
君の居ない日常に、僕はどうしても馴染めない。
君が居てはじめて、僕の日常が成り立つのだから。
ここまで導いておきながら、手を放して置いてきぼりにした罪を
傍に居る事で償ってもらおう。
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正帝…というか正←帝?
正帝は色々公式すぎて禿げ萌えます。DVDの書き下ろし小説とか
もう
公式同人誌でスy
私的正帝イメージソングはRADの「バイ・マイ・サイ」です。

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